江戸切子

江戸切子
天保5年(1834年)に、江戸の大伝馬町でビードロ屋を営んでいた加賀屋久兵衛という人物が、英国製のカットグラスを真似てガラスの表面に彫刻を施したのが始まりと言われています。
幕末に黒船で来航したペリー提督が、加賀屋から献上されたガラス瓶の見事な切子に驚嘆したという逸話が伝えられています。
明治時代には、英国人による技術指導によって、西洋式のカットや彫刻技法が導入されました。現代に至る精巧なカットの技法の多くはこの時に始まったとされています。江戸時代には、透明なガラスに切子が施されていましたが、現在では、「色被せ(いろきせ)」ガラスを使った製品が主流となっています。

概要

工芸品名 江戸切子
よみがな えどきりこ
工芸品の分類 その他の工芸品
主な製品 食器、酒器、花器、食卓用品、置物、装身具、文具、日常生活用品
主要製造地域 江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区、大田区、千葉県/市川市、千葉市、船橋市 埼玉県/所沢市、草加市、飯能市 神奈川県/川崎市 茨城県/龍ヶ崎市
指定年月日 平成14年1月30日

特徴

切子は、ガラスの表面に、金属製の円盤や砥石などを使って、さまざまな模様を切り出す技法です。江戸切子はこの技法によって作られています。 菊や麻の葉などの植物や、篭目・格子など江戸の生活用具を図案化した模様が、伝統模様として受け継がれています。江戸切子の柄は、それらを巧みに組み合わせて作り出されます。 かつては透明なガラス地にカットを施した「透き」と呼ばれる製品が主流でしたが、近年では、透明なガラス地の表面に色ガラスの膜を被せたガラスをカットした「色被せ(いろきせ)」の製品が主流となっています。 「色被せ」の製品は、色地の部分と透明部分の対比がはっきりした、メリハリの効いたカットに特徴があります。

作り方

制作工程は大きく4つに分かれます。ガラスの表面にカットの基準となる線や点を割付けて印を付ける「割り出し・墨付け」、金属の円盤で表面に模様の基本となる溝を削る「荒摺り(あらずり)」、砥石の円盤を使って模様を仕上げる「石掛け」、削った面に光沢をあたえる「磨き」の4工程です。 製品によっては、「荒摺り」を2~3段階に分けて行う場合もあります。また、「石掛け」では、「荒摺り」で削った模様を整形して仕上げる他、非常に細かい模様を砥石で削り出します。 江戸切子では、削る模様の下絵がガラス面に引かれることはありません。経験を積んだ目と熟練した技によって伝統の模様が作り出されます。