熊野筆

熊野筆
江戸時代、農業だけでは生活が支えきれない農民の多くが、農閉期に現在の和歌山県にあたる紀州の熊野地方や、奈良県にあたる大和の吉野地方に出稼ぎに行き、故郷に帰る時に、それらの地方で作られた筆や墨を仕入れて行商を行っていました。そうしたことから熊野と筆の結び付きが生まれました。
江戸時代後期に、広島藩を治めていた藩主の浅野家の御用筆司(ごようふでし)の所で、筆作りの方法を身につけた熊野の住人が、村に戻って村民にその技法を伝えたのが熊野筆の始まりとされています。

概要

工芸品名 熊野筆
よみがな くまのふで
工芸品の分類 文具
主な製品 毛筆、画筆、化粧筆
主要製造地域 安芸郡熊野町
指定年月日 昭和50年5月10日

特徴

学童用、一般用、書道専門家用等、書道に励む人々が望む筆を幅広く生産し、特殊筆もそれぞれ注文に応じて作っています。

作り方

毛を選び、選んだ毛を組み合わせます。毛は灰でもんで油分を抜き、必要な長さに揃えて切り、毛を良く混ぜ合わせて芯(しん)を作ります。芯の外側に衣のように毛を巻き付け、根元を糸で締めて焼けば、穂首が完成します。穂首を軸に付け、糊で固めて仕上げ、銘を彫刻して完成です。穂首の原料にはヤギ、ウマ、シカ、タヌキ、イタチ、ネコの毛等を使います。選毛は筆作りの基礎となる重要な工程で、選び方を間違うと良い筆は出来ません。