羽越しな布

羽越しな布
日本では、遠く縄文や弥生時代から山野に自生する科(しな)、楮(こうぞ)、楡(にれ)、藤(ふじ)、葛(くず)、苧麻(ちょま)などの草木から取り出した繊維で糸を作り、自家用として布に織り上げ衣装や装飾品などに利用してきました。
明治、紡績技術の発展による綿製品の普及から多くの地域で生産されなくなりましたが、当地地域においては長く着流しや農作業等の仕事着として利用されるとともに、漁網、漉し布、敷布や収納袋としても流通していました。 その後の日本経済の発展、生活の近代化からこれらの地域においても急速に需要が減少し、自家用として細々と生産されるに止まっていたものの、昭和の後半からこうした地域の伝統工芸品を核とした地域おこしの運動や素朴な工芸品へのニーズの高まりから生産活動が拡大しつつあります。

概要

工芸品名 羽越しな布
よみがな うえつしなふ
工芸品の分類 織りもの
主な製品 帯、小物
主要製造地域 鶴岡市 新潟県/村上市
指定年月日 平成17年9月22日

特徴

羽越地域の山間部に生育するシナノキ、オオバボダイジュ又はノジリボダイジュの樹皮から取れる靭皮(じんぴ)繊維で糸を作り、布状に織り上げたもの。 日本では、縄文や弥生時代から衣装や装飾品などに利用され、今日、山形県鶴岡市関川地区や新潟県岩船郡山北町において受け継がれています。原料が樹皮の繊維であることから、その風合いは粗々しいものの、ざっくりとした手触りと落ち着きのある風合いに特徴があり、帯地ばかりでなくバッグ、帽子等多くの日用品にも加工されています。

作り方

材料となるシナノキ、オオバボダイジュ又はノジリボダイジュは、シナノキ科シナノキ属の落葉樹。日本海側や東北地方の山野に多く自生し、地方によりマダ、マンダ、モウダ、モアダなどと呼ばれています。 糸はこの樹木の樹皮から取り出した繊維を績(う)み、撚(よ)りをかけたもので、この糸を地機や高機により織り上げたものです。樹皮の繊維なので機械化ができず、未だに手作業に頼らざるを得ません。